Tuesday 25 June 2019
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huffingtonpost - 21 days ago

「8050問題」と川崎・登戸殺傷事件を介護現場から考える

5月28日、川崎・登戸で50代の男がスクールバスを待っていた小学生や保護者らに次々と襲いかかり、うち2人が死亡する痛ましい事件が起きた。その後も、5月31日に40代の引きこもりの息子が70代の母親と口論になり、母親と妹を刺し、自らも命を絶った。6月1日には70代の元農林水産省事務次官が川崎・登戸殺傷事件を受けて、40代で引きこもりだった長男の将来を悲観し、胸などを包丁で刺し殺害する事件が起きた。これらの事件を受け、問題視されているのが「8050問題」だ。「8050問題」とは、主に50代前後の引きこもりが長期化している子どもを、80代前後の高齢の親が養うというもので、子どもが引きこもり生活で社会との接点を失う中で、親に病気や介護問題が起き、親子共倒れになるリスクが問題視されている。川崎・登戸殺傷事件においても、51歳の容疑者は80代の伯父伯母の家でひきこもり生活を送っていたという。認識を誤っていただきたくないのは、「引きこもり=危険人物」と短絡的に考えることだ。むしろ、凶行な行動に移すケースは稀であり、社会から孤立してしまう状況が見えなくなってしまうことがより問題を深刻化させてしまうのだと考えている。つまり、この事件を「50代の引きこもりが引き起こした、凶悪で凄惨な事件」と自分には関係ない 対岸の火 とするのではなく、私たちが意図せず社会から排除してきてしまった方々へ目を向ける機会として、一人ひとりが具体的な行動につなげるために、このコラムを書かせていただくことにした。なぜ、介護相談をしている私がこの問題について考えているかというと、以前、私がご自宅に訪問する介護の現場で働いていたときに、まさに「8050問題」を目の当たりにしていたからだ。あるご家庭には 開かずの間 というものがあり、要介護状態にある男性の介護に伺うと、妻から「あの部屋の前を通るときは、静かに通ってください」とお願いされることがあった。息子さんは仕事をしておらず、ずっと部屋の中に居て、親の介護には非協力的だという。これはもう10年以上前の話であるが、介護職という立場でさまざまな家庭を垣間見る日々の中では、決して珍しいことではなかった。そのため私にとってはかなり前から「8050問題」は身近な問題で、それに対して常に悔しさと危機感を持ち続けていた。そこで、今回の事件で問題視されている「8050問題」については、介護の現場や現在の主な活動である家族を介護する人をサポートする中で感じた見解と、二度と同じような事件を起こさないための私なりの考えをお伝えしたい。 開かずの間 に引きこもっていた子どもたちには、社会のレールから外れてしまったさまざまな理由があったのだろう。そんな子どもを親は突き放すことができず、家族だけで抱え込み、気が付けば数十年という月日が過ぎてしまい、支援を活用しての自立をするには手遅れの状態に 。これは介護にも同じことがいえ、介護も家族で抱え込めば抱え込むほど、最終的には家族全員が共倒れしてしまうなど手遅れの状態になってしまう。引きこもりのケースでは、介護とは違い、たいていの場合は自分のことは自分でできるので、子育ての延長で親が食事の世話さえすれば一旦は何とかなってしまう。引きこもりとなった原因の中には、発達障害や精神障害によるケースもあるだろう。しかし、親のサポートでなんとか生活できてしまうため、そういった障害を持っていたとしてもなかなか支援にはつながらない。ところが、親が病気になり介護が必要になったとたんにそのバランスが崩れ始める。そこで初めて「今度は自分が親の世話をするのか?」「今の自分に親の世話ができるのか?」「収入がないままで、これから生活していくことができるか?」など、自立した生活が困難な中で、急に訪れた親の介護問題で引きこもりの子どもたちは危機的状況に飲み込まれていく。そして、社会的支援とつながらないまま長引いた引きこもり生活により、親以外には頼れる人がいないと思い込んでしまう。今回の事件でも、容疑者の親族が川崎市の相談機関にたびたび相談をしていたそうだ。だが、すでにそのころには問題が複雑化し、支援が難しいものとなっていたと思われる。親が高齢になり、子どもの引きこもり期間が長ければ長いほど、その支援は難しくなってしまう。決して、容疑者を擁護するわけではないが、マスコミなどの情報によると、容疑者は学生時代から、日常生活の中でさまざまな問題を抱えていたようだ。もし、そのころから何らかの支援につながっていれば、こんなに悲しい事件は起きなかったかもしれない。だからといって、引きこもりの子どもを抱えている親御さんを責めるつもりは一切ない。介護もそうであるが、問題を抱えている当事者たちは目の前の問題に向き合えなかったり、気づかないまま時が過ぎてしまったりすることがある。さらに同居している親は自分の子供に対して、強く言えなくなっていることもあるだろう。そこで介護している人をサポートする活動をしている私が重要視しているのが、冷静な判断ができる、離れて暮らすきょうだいや親類の客観的な視点なのである。私はさまざまな企業で、その社員たちに対して個別の介護相談を行っている。その中で「きょうだいが実家に引きこもっていて親が困っている」という相談も少なくない。親の介護問題とともに引きこもりのきょうだいについて個別相談に来てくださる方々には、大きな期待を寄せている。それは問題が複雑化する前であったり、まだ解決への打ち手がある時期での相談であることが多いからだ。引きこもりの当事者である親子たちは、その期間が長ければ長いほど自分からは SOS が出せない状態になっている。また、もし SOS を出していても、現状の社会ではそれに気づいてくれる機会は少ないかもしれない。長く働いていない、社会とのつながりが持てなくなっている家族がいるという状況に気付いた段階で、きょうだいや親類が、実家の地域にある相談支援センターやメンタルクリニック、保健所など、とにかく早目に社会的な支援の相談窓口につないで欲しい。直接、説得するだけが解決手段ではない。自分が説得できない場合は、その旨も含めてさまざまな相談窓口に伝えるのだ。一緒に住んでいる家族に介護が必要になって追い込まれてからの支援では、福祉の支援を受け、つながるまでにどうしても時間がかかってしまう。遠慮せず早い段階で相談窓口に一報いただきたい。企業に出張して介護や介護のセミナーをする中で、きょうだいや親類からの早い段階での相談をいただけることで、「8050問題」を早期に発見することが難しいケースになりかねない事態を、未然に防ぐ可能性に偶然にも気付くことができた。どうか「まだ何とかなっているから大丈夫」と思わず、社会的な支援につながっていただくことをためらわないでいただきたい。誰もがどのような状況になっても生きやすい、豊かな社会づくりは一人ひとりの日々の小さな行動が必要であることを、今回の事件から受け取っていただきたいと切に願っている。


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